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MMWR抄訳
2006/01/27Vol. 55 / No. 3
MMWR55(3):65-68
Orf Virus Infection in Humans - New York, Illinois, California, and Tennessee, 2004-2005
ヒトにおけるオルフウイルス感染-ニューヨーク、イリノイ、カリフォルニアおよびテネシー州、2004~2005年
オルフウイルスはヒツジやヤギなどの小反芻動物から感染する人獣共通感染性パラポックスウイルスであり、ヒトでは感染動物やウイルスを媒介するものに接触した後に潰瘍性の皮膚病変が出現する。2004年3月、ニューヨーク州では51歳の女性が家庭農場で口に傷のある仔ヤギにミルクを与え、その1週間後、右中指に4mmほどの紅斑が出現した。ペニシリンが奏効せず、その後中央に3-4mmの白色の環状病変を伴い2cmまで進行し、シプロフロキサシンとアモキシシリン-クラブラン酸合剤で治療された。5月にはイリノイ州にて、16歳の少年が地元の祭りのためヒツジを世話している際に左手をかまれ、3週間後に左手親指に3つの小胞を認め受診した。そのヒツジは少年がかまれる1週間前に抗オルフウイルスワクチンを接種されていた。CDCにてオルフウイルス感染と診断されたが、無処置のまま2ヶ月後に自然治癒に至った。また、7月にはカリフォルニア州にて51歳の男性が競売で購入したヒツジ(オルフウイルス生ワクチン接種済み)の刈り込みを行った10日後、左手に掻痒性無痛性の小胞が出現し、生検の結果パラポックスウイルス感染と診断されたが、約2週間後、自然治癒に至った。その男性によれば、ヒツジの口粘膜に潰瘍があり、またヒツジに付着していたアザミのトゲで手を切っていた。2005年5月、テネシー州にて11歳の女児が仔ヒツジ用のハーネスで指を切り、5日後左手の薬指に約7mmの丘疹性小胞が出現した。リアルタイムPCRではオルフウイルスが確認されたが、スタンダードPCRでは陰性であった。感染有無の結果がでるまでの間、アモキシシリン-クラブラン酸合剤が投与されていたが、約1ヶ月後に傷は自然治癒した。また、受診10日前に家族によってそのヒツジは抗オルフウイルスワクチンを接種されていた。感染リスクの高い農場労働者などは、オルフウイルス感染に関し熟知しているため受診しない場合が多く、これにより医師らの認識が低下し、診断の遅れや無駄な抗生物質投与の原因となっている。公的機関によりオルフウイルス感染症の危険性および予防に関する認識を広めることが重要と考える。
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