ホームIMICライブラリMMWR抄訳2005年(Vol.54)タイから帰国したアメリカ人旅行者における日本脳炎-・・・
MMWR抄訳
2005/02/11Vol. 54 / No. 5
MMWR54(5):123-125
Japanese Encephalitis in a U.S. Traveler Returning from Thailand, 2004
タイから帰国したアメリカ人旅行者における日本脳炎-2004年
日本脳炎(JE)ウイルスは蚊が媒介するフラビウイルスであり、アジアにおけるウイルス性脳炎の主要原因である。この報告では、JEが風土病となっているタイ北部への旅行後、JEを発症したワシントン州住民1例を紹介する。2004年6月末、タイに32日間滞在していた22歳女性が帰国後、数時間以内にシアトルの病院に入院した。彼女は2日前から発熱、悪心、頭痛、羞明、項部硬直などが発現していた。腰椎穿刺による脳脊髄液(CSF)検査所見よりヘルペス脳炎および脳マラリアと推定し、薬物療法を行った。その2日後には構音障害や嚥下障害などが発現したが、その後症状は改善した。発症4日後に採取したCSFと血清、発症21日後に採取した血清よりJEウイルス特異的IgM抗体と中和抗体が検出され、最近のJE感染が確認された。この患者は2004年5月に大学主催の留学プログラムにより他の学生21名とタイのチエンマイ市を訪れていた。患者は旅行前にプライマリケア医の診察を受けていたがワクチン接種やマラリア予防などを受けておらず、滞在中に蚊にさされていた。彼女の入院から約6週間後、同行した学生22名中20名に対し電話調査を行った。同様の疾患発症者はいなかったが、20名中8名(40%)は健康管理者の診察を受けておらず、JEワクチンの接種を受けていたのは1名であった。全ての学生が屋外活動に参加しており、19名(95%)は蚊にさされていた。この調査結果に基づき、Washington State Department of Healthは大学の留学プログラムに対し、北アメリカあるいは西ヨーロッパ以外の地域へ旅行する全ての学生には出発前に適切なワクチン接種やマラリア予防などの健康上の予防措置について健康管理者からアドバイスを受けさせること、出発前のオリエンテーションで使用する旅行者の健康上のトピックスに関するカリキュラムを開発することを勧告した。Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)は、JEが風土病となっているアジア地域、特に農村部などをウイルス伝播シーズン中1ヶ月以上滞在する場合にはJEワクチンを接種するよう勧告している。また風土病的伝播がみられる地域への旅行者や、JEが風土病である農村部地域などで屋外活動に従事する渡航者は、滞在期間にかかわらずJEワクチンを接種するべきである。
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