室内空気の質に関する訴えに対しては、通常かびや換気システム、燃焼副産物、住人に発現した症状の特徴などについての調査を行う。この報告では、居住者が特有の呼吸器および神経学的症状を呈した家庭内曝露に関する調査結果を紹介する。2001年6月、42歳の男女が新築2階建ての家に引っ越した。引っ越し直後、地下室内で女性が息切れ、めまい、疲労、男性が軽度の錯乱、集中力低下、頭痛、視覚異常が発現した。それら症状は、常に上階へ移動後数分以内に消失した。地下室にある天然ガス湯沸かし器のパイロットランプは頻繁に消えたが、ガス会社と消防署の調査ではガス漏れやメタン、一酸化炭素は認められなかった。その後その男女だけでなく地下室内で作業をしていた工事関係者にも心拍数増加や息切れが発現したため、消防署は郡のHazardous Materials Incident Response Team(HMIRT)に調査を依頼した。HMIRTにより地下室内の酸素レベルが低いことが認められため、West Virginia Department of Environmental Protection(WVDEP)とCDCのNational Institute for Occupational Safety and Health(NIOSH)はさらなる調査を行った。地下室周囲のCO2サンプリングを行ったところ、地下室内各部のCO2濃度は9.5―12%(正常空気:0.035%)であり、家周囲の土壌におけるCO2レベルも8%と高値を示した。さらに、この家は石炭採掘場の跡地に建てられていることが明らかになった。家屋内への地中CO2浸潤を制限するよう改修したところ、地下室内のCO2濃度は0.2%まで減少し、酸素濃度も正常となり、居住者の関連症状も消失した。この報告は、屋内空気の質に関する一般市民の意識を高めること、緊急対応のための特殊訓練、リスク評価のための注意深い環境値測定、健康状態悪化を防ぐための対策などの必要性を強調するものである。洞窟の埋立地や鉱山跡地などに建てられた建造物に対し割れ目の封鎖や建物内の陽圧維持、地表付近の換気といった防御構造を命じる建築基準法、公衆衛生上有用と考えられる。