ホームIMICライブラリMMWR抄訳2004年(Vol.53)輸入されたラッサ熱-ニュージャージー州,2004年
2004/10/01Vol. 53 / No. 38
MMWR53(38):894-897
Imported Lassa Fever - New Jersey, 2004
ラッサ熱はラッサウイルスにより起こる急性ウイルス性疾患であり、まれに同疾患が風土病であるアフリカの地域から輸入される場合がある。2004年8月28日、ニュージャージー在住の38歳の男性が西アフリカから帰国後ラッサ熱のため死亡した。この報告は連邦、州、地方の公衆衛生局によって実施された臨床的・疫学的調査の結果をまとめたものである。本症例はリベリア生まれのビジネスマンであり、入院前の4ヶ月間は西アフリカにいてリベリアと所有農場のあるシエラレオネの間を往復していた。8月のある日、発熱、悪寒、重度の咽喉痛、下痢、背部痛が発現した。その2日後にシエラレオネから空路ロンドン経由でニュージャージー州ニューアークに戻り、帰国後数時間以内に治療のためトレントンの病院に入院した。マラリアと腸チフスを疑い抗マラリア薬や抗細菌薬による治療を行ったが、入院3、4日目に状態は悪化した。黄熱病とラッサ熱の可能性を考慮しリバビリン投与などを含む新たな薬物療法の準備を始めたが、それから6時間後(治療開始前)に死亡した。その後、血清中抗原検出、免疫染色剖検肝生検、細胞培養によるウイルス単離、RT-PCR法によるウイルスのシークエンシングにより、ラッサ熱と確定診断した。本症例あるいは罹患中の体液に直接接触した可能性のある者を同定するための調査が実施された。感染性があると思われる期間には188名が患者と接触しており、このうち病院を訪れた患者の妻と3名の子供、患者の兄弟の計5名はハイリスクと考えられた。残りの低リスク群183名のうち9名は他の家族、139名はトレントン病院の医療従事者、16名はバージニア州とカリフォルニア州の民間研究所の研究者、19名はロンドンからニューアークまでの航空機の同乗者であった。航空機の乗客19名は健康状態が良好であり、患者との接触後ラッサ熱の潜伏期間である21日間に発熱を報告した者はいなかった。ハイリスクの5名では、潜伏期間が終了する9月18日現在、ラッサ熱に一致する症状は報告されていない。ラッサ熱やウイルス性出血熱症候群を引き起こす可能性のある輸入感染例に対して、医師、病院感染専門家、CDC関連部門が連携し、正確かつ迅速な感染症対策を確立する必要がある。
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