ホームIMICライブラリMMWR抄訳2004年(Vol.53)百日咳を疑われていなかったが血液培養により診断され・・・
2004/02/27Vol. 53 / No. 7
MMWR53(6):131-132
Fatal Case of Unsuspected Pertussis Diagnosed from a Blood Culture - Minnesota, 2003
百日咳では通常吸気時のフープ、発作性の咳、咳嗽後の嘔吐といった症状がみられる。しかし青少年や成人、最近のワクチン接種者ではしばしば非定型的症状がみられ、診断の遅れや感染性保菌者の発生をもたらす。この報告は、Minnesota Department of Health(MDH)が行ったBordetella pertussis感染が疑われていなかった死亡例1例の調査結果を紹介したものである。2003年2月、多発性骨髄腫のため免疫抑制療法を受けていた82歳女性が椎骨圧迫骨折による疼痛管理のため地域の病院を受診した。胸部X線所見にて結節性浸潤影がみられたが、1月初旬に診断された肺炎によるものと考えた。入院2日後、咳が発現し、肺検査にてラ音を認めた。一旦介護施設へ退院したが、咳が悪化し発熱もみられたため、再入院した。非マクロライド系広域スペクトル抗生物質による治療を行ったが、その後死亡した。本症例では最初にB.pertussis感染を疑わなかったためB.pertussis分離のための鼻咽頭検体は採取しておらず、炭とヒツジ血液を含む特殊培地での血液培養にてB.pertussisが分離された。この患者と一緒に住んでいた娘は母親の発症の約1ヶ月前から間欠的に咳が出ており、その咳は母親の咳嗽発現とほぼ同時に百日咳様の発作性咳嗽に変化した。母親のB.pertussisの結果が知られるまで、娘は無症候性であったため、検査は行わなかった。接触者調査にて、この患者との接触者47名を確認した。このうち患者との最終接触後20日以内に咳嗽性疾患が発現したのは家族17名中2名(12%)、介護施設スタッフ29名中10名(34%)であり、そのうち家族1名とスタッフ1名の鼻咽頭検体は培養法とPCR法にてB.pertussis陽性であった。PFGE分析にて、患者とこれら2名の感染者との疫学的関連を確認した。青少年および成人の百日咳患者は、重度疾患や死亡のリスクが最も高い乳児に対する感染源となる可能性がある。B.pertussisは青少年と成人における咳嗽性疾患の一般的な原因菌であるため、持続性咳嗽がみられる場合には百日咳の感染を考慮して適切な検査を行う必要がある。
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