ホームIMICライブラリMMWR抄訳2003年(Vol.52)最新情報:重症急性呼吸器症候群(SARS)-トロン・・・
2003/06/13Vol. 52 / No. 23
MMWR52(23) : 547-550
Update: Severe Acute Respiratory Syndrome - Toronto, Canada, 2003
トロントにおける重症急性呼吸器症候群(SARS)は、2003年2月23日に香港から帰国した女性で初めて認められ、その後数ヶ所のGreater Toronto Area(GTA)病院で257例を巻き込むアウトブレイクとなった。厳格な感染コントロール対策などの実施によりSARS患者数は減少し、4月20日には1例も確認されなかった。しかしSARS伝播が遮断されたと考えられてから約4週間後、トロントの病院で患者、訪問者、医療従事者(HCW)において第2のSARSアウトブレイクが認められた。2月23日-6月7日、Ontario Ministry of Health and Long-Term CareにはSARS患者361例が報告され[疑い例136例(38%)、可能性例225例(62%)]、6月7日現在、33例(9%)が死亡した。4月15日-6月9日にToronto Public Healthに報告された74例中29例(39%)はHCW、28例(38%)は入院患者、17例(23%)は病院訪問者であった。また74例中67例(90%)は350床のGTA地域病院であるA病院での曝露が直接原因であった。患者の多くは整形外科および婦人科患者の病棟に関与していた。5月初旬から中旬、州のSARSコントロール指令部の勧告に従い、A病院は救急部とICU以外の全ての部署で呼吸器症状のない非SARS患者に対するSARS拡大予防措置(N95か同等のマスクの使用によるルーチンでの接触予防措置)を中止した。5月20日、トロントのあるリハビリテーション病院で発熱性疾患を有する5例が報告された。これら5例中1例は4月22日-28日にA病院の整形外科病棟に入院しており、さらに1例は5月22日にSARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)陽性であることが明らかになった。調査の結果、この陽性患者もA病院の同病棟に入院していたことが判明した。オンタリオ州での第2のアウトブレイクに関連した発端者は3月22日に骨盤骨折のためA病院に入院した96歳男性であった。5月23日、A病院は新たにSARSと認められた患者以外全ての入院を受け入れないこととした。また、州は数ヶ所のGTA地域にある病院に感染コントロール予防措置のレベルを上げるよう新たな指令を出した。6月9日現在、A病院での曝露による新たなSARS患者79例中78例は5月23日以前の曝露により発症したと思われる。厳格なSARSコントロール対策を州全体で緩和した後、SARSと認識されていなかった入院患者への曝露がHCW間での伝播に関与したとみられている。したがって、SARS患者報告数の減少後には特に、入院患者と訪問者の発熱と呼吸器症状をモニタリングする必要がある。
Copyright © 2013 International Medical Information Center. All Rights Reserved.