ホームIMICライブラリMMWR抄訳2003年(Vol.52)重症急性呼吸器症候群(SARS)-台湾,2003年
2003/05/23Vol. 52 / No. 20
MMWR52(20) : 461- 466
Severe Acute Respiratory Syndrome - Taiwan, 2003
2003年4月22日、Taiwan Department of Health(DOH)は重症急性呼吸器症候群(SARS)に罹患した台北の大規模市立病院(A病院)おける医療従事者(HCW)7例についての報告を受けた。これまでの台湾での報告例は全例ともSARS関連地域への渡航者と関係していたが、8ヶ所の病院で認められた後続の患者はA病院での曝露に関連していた。5月22日現在、台湾では483例の可能性例が報告され全例が入院、84例(17%)は退院したが、60例(12%)は死亡した。SARS可能性例の平均年齢は43(9-91)歳で、341例(71%)は台北で発症した。台湾での最初の患者は3月14日に確認された中国広東省からの旅行者であった。3月14日-4月21日、台湾で可能性例は28例報告され、うち4例が二次感染であった。この頃までSARSはビジネス旅行者において散発的に発生するものとされており、二次的拡大はSARS患者と接触が確認された人に限定されていた。しかし4月22日以降、A病院におけるアウトブレイクにより台湾でのSARS患者は激増し、4月22日-5月1日の台湾における可能性例は89例とそれまでの3倍以上に増えた。アウトブレイクの発端者はA病院の従業員で、4月12日に発熱と下痢が発現し、4月12、14、15日に救急外来(ED)で診察を受けた。その後も従業員は勤務を続け、病院の地下の宿舎に寝泊まりし、勤務時間外はED内で過ごしていた。勤務中、病院の患者、スタッフ、来院者としばしば接触していた。4月16日、症状が悪化したため感染性腸炎の診断で入院し、4月18日、息切れが発現、胸部X線所見にて両側性浸潤像がみられたため、SARS可能性例としてICUの隔離室へ移送された。PCR法にてSARS関連コロナウイルス(SARS-CoV)陽性であることが判明した。4月29日に死亡、感染源は不明であった。4月22日、A病院の患者、来院者、HCWにおいてSARSの集団感染が報告された。4月23日、DOHはA病院におけるSARS伝播の対応を検討するため緊急対策本部を設置した。4月24日にはA病院の全患者、来院者、スタッフを建物内に隔離し、4月9日以降にA病院から退院した患者や来院者の自宅隔離を強制するなどしたが、SARS患者は増加し続けた。4月29日-5月8日、81例のSARS患者が台北内の病院15施設に転院した。5月22日現在、A病院での曝露に関連した可能性例は137例であり、うちHCWは45例(33%)で、26例(19%)が死亡している。DOHは院内感染の制御を中心とした対策を実施中である。
Copyright © 2013 International Medical Information Center. All Rights Reserved.