ホームIMICライブラリMMWR抄訳2003年(Vol.52)重症急性呼吸器症候群(SARS)のアウトブレイク-・・・
2003/03/21Vol. 52 / No. 11
MMWR52(11) : 226- 228
Outbreak of Severe Acute Respiratory Syndrome -Worldwide, 2003
多くの国で発生した原因不明の非定型肺炎(重症急性呼吸器症候群:SARS)のアウトブレイクの発生範囲についての概要と、疑いのある患者の定義、米国における暫定的な感染予防法についての報告。2月11日、Chinese Ministry of Healthは2002年11月16日-2003年2月9日に中国南部で発生した原因不明の急性呼吸器症候群305例をWHOに報告した。本疾患には患者と接触した医療関係者や家族に伝播する特徴があり、5例が死亡した。2月26日、中国本土と香港に旅行した47歳男性が呼吸器疾患を発症した。この患者はベトナム(ハノイ)に入院後、3月13日に転院先の香港の隔離施設で死亡した。さらに、この患者と接触したハノイと香港の病院の医療関係者が同様の疾患を発症した。3月12日、WHOは全世界にこのアウトブレイクについて警告し、世界各地で調査を開始した。3月19日、WHOは11ヶ国(香港、ベトナム、シンガポール、カナダ、台湾、ドイツ、タイ、スロベニア、英国、米国、スペイン)からSARSの可能性のある患者264例の報告を受けた。これら患者では高熱、筋肉痛、悪寒、硬直、咽喉炎、息切れ、咳、肺炎のX線学的エピソードがみられ、3月15日にCDCが定義したSARSが疑われる症状と合致した。潜伏期間は一般的に3-5日間で、血小板減少と白血球減少がみられた。多数の患者は入院を必要とする呼吸困難や重度の肺炎を呈し、一部の患者では人工呼吸器を使用した。264例中9例(3%)は死亡した。また、患者に接触した香港とハノイの医療関係者における二次感染率は50%以上であった。3月19日現在、CDCはSARSの疑いのある11例について調査中である。SARSの疑いのある患者では、初診時に胸部X線、パルスオキシメトリー、血液培養、喀痰グラム染色と培養、呼吸器の病原体のウイルス検査を行うべきである。医師はさらなる検査に備えて入手できる臨床検体を確定診断が可能となるまで保存しておく必要がある。また診断時には標準的な感染予防措置を実施し、感染経路がより明確になるまでは眼の保護も行うべきである。
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