ホームIMICライブラリMMWR抄訳2003年(Vol.52)母親のコバラミン摂取不足に関連する小児神経機能障害・・・
MMWR抄訳
2003/01/31Vol. 52 / No. 04
MMWR52(4) : 61- 64
Neurologic Impairment in Children Associated with Maternal Dietary Deficiency of Cobalamin - Georgia, 2001
母親のコバラミン摂取不足に関連する小児神経機能障害-ジョージア州,2001年
2001年ジョージア州においてコバラミン(ビタミンB12)欠乏による小児神経機能障害が2例報告された。症例1)満期出産の女児で、8ヶ月齢時、母乳から離乳食へ移行したが食欲不振、嘔吐を繰り返した。母親は7年前から菜食主義となり、栄養剤およびビタミン剤を摂取していた。15ヶ月齢時、成長および発達を心配した両親が小児科を受診させ、成長障害、発達遅延、重度大赤血球性貧血と診断され、2001年8月に入院となった。コバラミン欠乏症と診断され(尿メチルマロン酸上昇、血清B12 : 100pg/ml)。経口および経鼻胃管チューブによる栄養補助食品の摂取、さらにコバラミン2mg、ヒドロキソコバラミン3mgの3日間筋肉内投与を実施した。3日後、部分性複雑発作を来し、脳MRIでは全体的な大脳萎縮が認められた。28ヶ月齢時の微細運動能力は9ヶ月齢、総合運動能力は18ヶ月齢、表出言語は10ヶ月齢、受容言語は12ヶ月齢程度であった。32ヶ月齢時、発達の進歩は認められるが依然遅延しており、特に発語と言語能力の遅延が顕著であった。現在、舌下コバラミン剤が連日処方されている。症例2)2001年3月、30ヶ月齢の男児(満期出産、母乳9ヶ月)が成長および発達障害のため遺伝子クリニックを受診した。母親は20年前から菜食主義となり、わずかな肉、魚、乳製品と断続的にビタミン剤(TwinLab Stress B Complex Caps、濃縮コバラミン250μg含有)を摂取していた。9ヶ月齢時、成長および発達の遅延が認められ、11ヶ月齢時、小帯切除術による嚥下および咀嚼の改善を試みたが成長は不十分であった。運動および発語の発達不良を主訴に発達専門医を受診した。尿メチルマロン酸の持続的な上昇が認められたものの、遺伝的に検討するまでコバラミン欠乏に対する治療は行われなかった。コバラミン欠乏症と診断された後、ヒドロキソコバラミン1mgを2週間筋注し、舌下剤1mgが連日処方された。運動能力が向上し理学療法は終了させたが、発語、言語、作業療法は継続した。治療から約6ヶ月後、発語および微細運動能力は遅延しているものの、総合運動能力は年齢相応となった。現在、コバラミン1mgを隔日に服用している。乳児および小児におけるコバラミン欠乏症は4-8ヶ月齢時の母乳内のコバラミン欠乏に起因することが多い。臨床症状が非特異的であることから診断は困難であるが、メチルマロン酸、ホロトランスコバラミンII、総ホモシステインおよび血清B12などが有用な指標となりうる。コバラミン欠乏は時として不可逆性の神経障害を来す場合もある。菜食主義の女性は妊娠時にコバラミン欠乏症を考慮し、その摂取に努めるべきであり、また医師らも妊婦に対してこれらの注意を喚起する必要があると考えられる。
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