ホームIMICライブラリMMWR抄訳2015年(Vol.64)ヒトペスト ― アメリカ、2015年
2015/08/28Vol. 64 / No. 33
MMWR64(33):918-919
Human Plague — United States, 2015
2015年4月1日以降、国内6州にてヒトペストの発症が計11例報告されており(アリゾナ州:2例、カリフォルニア州:1例、コロラド州:4例、ジョージア州:1例、ニューメキシコ州:2例、オレゴン州:1例]、男性は9例で年齢中央値は52歳(14~79歳)、3例(16、52、79歳)が死亡している。2001~2012年の年間報告数は1~17例(中央値:3例)であり、2015年は非常に多くなっているが、その原因は不明である。ペスト菌は野生のげっ歯類とそれに付着するノミに循環し、ヒトへの感染はノミの咬傷または感染した体液や組織への直接接触、感染したヒトや動物の痰などの飛沫感染による。潜伏期間は2~6日間であり、突然の発熱と倦怠感に腹痛、悪心、嘔吐などを伴う。感染経路により3種類に分類され、腺ペストはペスト菌に感染したノミに咬まれることで感染し、全体の80~85%を占める。1~数個のリンパ節が疼痛を伴い腫大し、発症から数日で進行する。敗血症型ペストは約10%を占め、感染後、菌が血流に乗り全身に広まるため、局所症状はない。原発性肺ペストはペスト患者の約3%に発症し、感染力のある飛沫へのエアロゾル曝露により感染、また、二次性肺ペストは治療前の腺ペストまたは敗血症型ペスト患者の肺から菌が拡散して発症する。治療をしなければ致死率は66~93%と高いが、迅速な抗生物質(アミノグリコシド系、フルオロキノロン系またはドキシサイクリン系薬等)の投与により大きな転帰の改善が得られる。アメリカ西部にてこのような症状を示す場合はペストを疑い、血液、腺腫吸引液、痰などの検体でペスト診断検査を行い、確診前より迅速に抗生物質投与を開始、さらに公衆衛生局へ報告する。また、感染防止のため屋外では長ズボンを着用し、虫除け薬を服や皮膚に使用するとともに、動物と直接接触することは避け、リスや他のげっ歯類への餌やりは行わないなどの注意が必要である。
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