ホームIMICライブラリMMWR抄訳2010年(Vol.59)ポリオ根絶に向けた進展-インド、2009年1月~2・・・
2010/12/10Vol. 59 / No. 48
MMWR59(48):1581-1585
Progress Toward Poliomyelitis Eradication - India, January 2009-October 2010
インドは、野生型ポリオウイルス(WPV)の伝播が遮断したことのない4ヶ国(アフガニスタン、ナイジェリア、パキスタン)のひとつである。インドにおける WPV伝播は、歴史的に定期予防接種率が低く移住者が多く、ワクチン効果が他の地域に比べて相対的に低い2州(Uttar Pradesh 、Bihar)が中心となっている。しかしUttar Pradesh とBiharでは 2009年11月~2010年8月の9ヶ月間にWPV1型症例の報告がなかった。この報告は、2010年12月4日の報告データに基づきインドにおける 2009年1月~2010年10月のポリオ根絶に向けた最新の進展状況(予防接種活動、WPVサーベイランス、WPVの疫学)をまとめたものである。母集団ベース調査データによると、インドにおける2007~2008年の生後12~23ヶ月の小児における経口ポリオウイルスワクチン(OPV)の3回接種を含む推定全国定期予防接種率は66%であり、Uttar PradeshとBiharの予防接種率は全国で最低であった(それぞれ40%、53%)。2009~2010年にインドでは年2回の全国予防接種日 (NID)を含めた補足的予防接種活動(SIA)を実施した。さらに2009年には7回の準全国予防接種日(SNID)と4回の大規模掃討活動(最近伝播のエビデンスが確認された限られた地域での戸別訪問による強化SIA)を、2010年1月~10月には5回のSNIDと3回の大規模掃討活動を行い、 2010年1月の2価(1型、3型)OPV(bOPV)導入後にはbOPVを用いたSIAを6回実施した。2010年のSIAモニタリングデータによると、Uttar PradeshとBiharにおける2歳未満の小児のワクチン接種率はそれぞれ97%、99%であった。しかしSIAラウンド後に実施した調査の結果、特定の移住者集団(建設作業者、遊牧民など)における5歳未満の小児の3~11%は未接種であることが明らかになった。インドの15歳未満の小児における非ポリオ急性弛緩性麻痺(AFP)発症率(10万人あたり)は2009年が11.4例、2010年1月~10月が11.1例(Uttar Pradesh:22.8例、Bihar:33.9例)であり(インド各地域の目標:2例以上)、適切な便検体の採取率はそれぞれ83%、84%であった (目標:80%以上)。2010年1月~10月に確定されたWPV症例は40例(WPV1型:17例、3型:23例)のみであり、2009年の同時期の 626例に比べて94%減少した。この減少は、bOPV導入の影響が大きいと思われた。これら40例中28例(70%)は2歳未満の小児であった。また 19例はUttar PradeshとBiharからの報告であり、これら全例がOPVを7回接種していた。インドではWPV伝播の決定因子として移住者集団の重要性が増加している。したがって、インドにおけるWPV伝播の完全遮断にはUttar PradeshとBiharにおける高い免疫レベルの維持とSIA中にワクチン接種を受けない移住者集団の小児を標的としたさらなる対策が必要である。
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