2007年10月29日、Minnesota Department of Health(MDH)はミネソタ州南東部の豚肉解体処理場(A処理場[従業員数:約1200名])の従業員が原因不明の神経疾患を発症したという報告を受けた。MDHはそのアウトブレイクの特徴を検討するためA処理場の詳細な調査を開始した。この報告は、MDHとCDCによる現在進行中の調査の概要について述べる。2008年1月28日現在、A処理場従業員12名が進行性炎症性神経障害(PIN)の確定例、2名が高可能性例、2名が可能性例と確認された。発症日は2006年11月‐2007年11月、確定例12名の年齢中央値は31歳(21‐51歳)、6名は女性であった。症状は急性麻痺から進行性の対称性脱力感までみられ、発症期間は8‐213日であった。11名は電気的診断にて軸索あるいは脱髄性末梢神経障害のエビデンスを示した。確定例12名全例が処理場の1区域(warm-room)内にある豚の頭部を処理する区画(head-table)で作業していたか、その区画に定期的に出入りしていた。特異的な疾患関連危険因子を同定するため、確定、高可能性例10名を症例群、健常なwarm-room作業者48名、健常なhead-table作業者65名を対照群として症例-対照研究を行った。1月30日の時点で、全例から採取した血液と咽喉スワブ検体においてPIN発症の原因となる感染性病原体は検出されていない。症例-対照研究の結果、症例群はwarm-room対照群に比べhead-tableでの作業(オッズ比[OR]:7.0)と豚頭部から脳や残存骨格筋を除去する作業(OR:15.3)をより多く行っていた。head-table作業者の比較でも、症例群は対照群に比べ豚頭部から脳や残存骨格筋を除去する作業を多く行っていた(OR:9.50)。処理場内の環境調査は2007年11月28日に行われた。head-tableでは豚頭部からの脳組織除去を容易にするため、圧縮空気装置を用いて脳組織を粉砕し液状化していた(blowing brains技術)。この処理ではエーロゾル化した脳組織を含む可能性のある小滴などが発生するため、作業者はそれに曝露した可能性が高かった。さらに米国内の500名以上の従業員がいる25ヶ所の豚肉解体処理場を対象とした調査にて、3ヶ所の処理場(A処理場、ネブラスカ州、インディアナ州)が豚脳の除去に最近圧縮空気を使用したことを報告した。ネブラスカ州の処理場では現在までにPIN症例は確認されていないが、インディアナ州の処理場では同様の処理作業に従事した経験のある作業者数名で神経疾患が予備的に確認されており、調査が続けられている。これら3ヶ所の処理場は、脳組織の除去に圧縮空気を使用することを中止した。PIN発症原因のひとつの仮説として、エーロゾル化した豚の神経蛋白の曝露が自己免疫を介して末梢神経障害を引き起こした可能性が考えられている。CDCは、PINに似た症状を呈する豚肉解体処理場の作業者に関する情報の提供を求めている。