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MMWR抄訳

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2006/08/18Vol. 55 / No. 32

MMWR55(32): 873-876
Imported Melioidosis - South Florida, 2005

輸入類鼻疽症-南フロリダ、2005年

2005年、2例の類鼻疽症(8月と10月)が、フロリダ保健省に報告された。2003年にフロリダで疾病報告が義務となって以来、初めての症例である。1症例は、類鼻疽菌が類鼻疽症を引き起こす細菌とは認識されていなかったことが地域保健省への報告遅延につながり、両症例では認知の遅れと危険な検査室試験によって、検査室研究者が類鼻疽菌に曝露される結果となった。この報告は、症例の臨床的、検査的観点と、フロリダ保健省によって実施された疫学的研究を要約している。調査結果は、類鼻疽菌についての検査認知と報告の改善、安全な検査方法、また類鼻疽症治療と再発防止の抗生物質療法に対して絶対遵守の必要性を強調している。類鼻疽症は、グラム陰性、腐生性細菌の類鼻疽菌(以前は偽鼻疽菌)を原因とする深刻な事態になる危険性がある疾病であり、最も一般的には敗血症を伴う、あるいは伴わない肺炎として発現する。また皮膚や軟組織の膿瘍の原因ともなるが、内臓膿瘍は稀である。類鼻疽症は、東南アジアや北オーストラリアでは風土病であるが、北緯20°と南緯20°間の熱帯地域でも散発的に見られ、風土病である地域では、ヒトは土や水の有機体への曝露を通して、接種や吸入によって感染する。曝露から疾病発症までの潜伏期間中央値は、9日(範囲:1日~21日)である。2型糖尿病患者は、特に症候性感染に罹りやすい。追加的危険因子としては、サラセミア、腎臓疾患、慢性アルコール中毒、肝疾患を含み、ヒト免疫不全ウイルスは、危険因子とされていない。無症候性感染は発生することがあり、疾病の症候性再活性化は曝露後数年経て発生することがある。敗血症や肺関連を伴う症例の症例死亡率は20%から50%の範囲である。死亡率減少は、抗生物質療法と支持療法の改善に関連がある。症例1については、ブロワード郡で8月22日、成人発症の糖尿病とギランバレー症候群の既往歴を持つ48歳男性が、背痛、発熱(102.6°F[39.2℃])と両側性下肢脱力と痺れを発現、左下葉肺炎、直腸周囲膿瘍(入院時に排膿)、さらに再発ギランバレー症候群の可能性があると診断された。患者は、セフトリアキソンとアジスロマイシンによる抗生物質治療のために入院した。類鼻疽菌が、入院時に採取した血液培養の中に確認された。8月31日、患者は21日間経口レボフロキサシンの治療で退院したが、9月11日、重篤な背痛と左側胸膜性の胸痛で再受診した。患者は急性の両足麻痺と感覚喪失を発現、また胸椎硬膜外膿瘍で脊髄除圧術の緊急手術を施行された。その後静注イミペネム・シラスタチンとセフタジジムの8週間処方療法、20週間経口抗生物質の服用後、入院患者リハビリへと移った。疫学的調査によると、患者は7月17日から8月7日までホンジュラスを旅行した。症例2については、9月22日、80歳女性が発熱(103°F[39.4℃])、頭痛、衰弱、筋肉痛の4日後に肺炎で入院し、輸液、セフトリアキソン、アジスロマイシンの治療を受けた。9月23日、心筋梗塞、呼吸困難があり、9月24日抗生物質をバンコマイシン、セフェピムに変更したが、死亡した。フロリダ保健省検査室で、入院時採取血液培養の分離株から類鼻疽菌を確認した。疫学調査によると患者はホンジュラス、サンファンプエブロに在住、9月18日に家族を訪問するためフロリダに到着していた。また、ブロワード郡病院6名、マイアミデイド郡病院3名の検査者は、培養プレートに鼻を近づけたり、安全キャビネット以外で操作するなどハイリスクな曝露を受けたが、類鼻疽菌は確認されず、症状もなかった。

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