ホームIMICライブラリMMWR抄訳2006年(Vol.55)臓器移植後のシャーガス病-ロサンゼルス、カリフォル・・・
2006/07/28Vol. 55 / No. 29
MMWR55(29): 798-800
Chagas Disease After Organ Transplantation - Los Angeles, California, 2006
シャーガス病は、寄生虫Trypanosoma cruziによって引き起こされる感染症で、サシガメ類(すなわちkissing bugs)は感染した糞便を通して寄生虫に感染させる。T. cruziは先天的に、そして輸血や臓器移植によっても感染する。感染は未治療であれば生涯継続する。感染者の多くは無症状であるために、病気は診断されないままである。シャーガス病の流行地であるラテンアメリカ地域では、臓器と血液ドナーの定期的血清検査が実施されるが、米国ではT. cruziのスクリーニング検査は無認可である。しかし、研究テストを利用しての血清陽性率の調査では、米国の血液臓器ドナー集団において、T. cruzi抗体の存在は立証されている。この報告は、2006年2月、2ヶ所のロサンゼルス郡病院から報告された心臓移植患者の急性シャーガス病2症例について述べている。米国では、固形臓器移植によるT. cruzi感染は過去に1件報告されているが、それによると、3名の臓器移植者が感染していた。症例1は、2005年12月、64歳の特発性心筋症の男性が心臓移植を受けたが、2006年1月に臓器拒絶反応の疑いがあり免疫抑制を強めて治療を行った。2006年2月、患者は2週間、拒食症、発熱、下痢を伴い再入院した。末梢血塗抹標本によってT. cruziトリポマスティゴートが明らかになり、血液培養はT. cruzi陽性、心内膜心筋生検標本は無鞭毛型を含んでいた。感染源を確認するために、心臓ドナーと臓器移植者へ輸血された全血液製剤について遡及的調査を行った。利用した血液ドナーはすべて、免疫蛍光検査法(IFA)や放射性免疫沈降法(RIPA)によって、T. cruzi抗体陰性と診断された。しかし、臓器ドナーの血液は、RIPAによってT. cruzi抗体で血清反応陽性を示し、IFAではぎりぎりの陽性であった。臓器ドナーは米国で生まれたが、メキシコのT. cruzi流行地に旅行した経験があった。症例2は、2006年1月、73歳男性は虚血性心筋症で心臓移植を受け、2006年2月に発熱、疲労、腹部発疹で再入院した。薄層血液塗抹標本によってT. cruziトリポマスティゴートが明らかになり、血液培養はT. cruzi陽性であった。臓器入手と移植の記録が再調査されたが、T. cruzi感染を同定できる危険因子はなかった。患者はT. cruziに対し血清反応陰性であったが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)では陽性で、最近の感染であることを示した。感染源は症例1と同じ方法で調査された。利用した血液ドナーはすべて、T. cruziに対し血清反応陰性であった。臓器ドナーはエルサルバドル生まれで、死亡時にはロサンゼルスに住んでおり、RIPAではT. cruzi抗体陽性、IFAでは陰性であった。
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