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がんinfo

子宮体がん

概説

このセクションの要点
  • 子宮体がんは子宮内膜という組織に悪性(がん)細胞が認められる病気です。
  • 乳がん治療に「タモキシフェン」という薬剤を用いる場合や、女性ホルモンの補充療法として、プロゲステロンは併用せずにエストロゲンだけを使用すると、子宮体がんの発生するリスクに影響が出ます。
  • 子宮体がんを疑う症状としては、帯下(おりもの)の異常、下腹部の痛み、腰の痛みなどがあります。
  • 子宮体がんを発見し、診断するには、子宮内膜検査を行います。
  • 諸条件により予後(治癒の可能性)や治療法の選択が異なります。

子宮体がんは子宮内膜という組織に悪性(がん)細胞が認められる病気です。

子宮内膜というのは子宮の上皮で、筋肉でできており、内部には空洞があります。子宮は胎児が発育する場所です。妊娠していない女性の大多数においては、子宮のサイズは約7cm(約3インチ)程度です。

子宮の狭い下部は頸部で、膣に通じています。

子宮体がんは、子宮の筋肉のがんである子宮肉腫とは別のものです。詳しい情報はPDQの子宮肉腫*の治療に関する項目を参照してください。

(注)*の項目はがんinfoの項目には含まれていません。

乳がん治療に「タモキシフェン」という薬剤を用いる場合や、女性ホルモンの補充療法として、プロゲステロンは併用せずにエストロゲンだけを使用すると、子宮体がんの発生するリスクに影響が出ます。

乳がんの治療に「タモキシフェン」という薬剤を用いた患者さんの中には、子宮体がんになる方がいます。このホルモン剤を服用している方は、婦人科で毎年診察(内診)を受けるようにし、不正出血(月経以外の出血)がみられたらできる限り早く報告しましょう。また、エストロゲン(ある種のがんの発育を促進する可能性がある女性ホルモン)を単独で服用している女性は子宮体がんになるリスクが高くなります。もうひとつの女性ホルモンであるプロゲステロンをエストロゲンと併用すると、子宮体がんのリスクは上昇しません。

子宮体がんを疑う症状としては、帯下(おりもの)異常、下腹部の痛み、腰の痛みなどがあります。

これらや他の症状は子宮体がんによって起きますが、他の理由で同じ症状が出ることもあります。
以下の症状がひとつでもある方は、必ず医師の診察を受けてください:
  • 生理(月経)とは関係の無い出血やおりものがある。
  • 排尿しづらい、または、排尿するときに痛みがある。
  • セックスの最中に痛みを感じる。
  • 下腹部や腰が痛い。

子宮体がんを発見し、診断するには、子宮内膜検査を行います。

子宮体がんは子宮の内部から始まるので、普通は子宮頸部の細胞診を行っても子宮体がんを発見できません。そのため、子宮体がんの診断には、子宮内膜の組織を採取してそこにがん細胞があるかどうかを顕微鏡で探す必要があります。子宮内膜の検査には以下の方法があります:
子宮内膜生検:
細くてしなやかな管を子宮頸部から子宮へ挿入して子宮内膜(子宮の内層)から組織を採取します。子宮内膜から小量の組織をやさしくこすりとり、組織サンプルを採取します。病理医が顕微鏡下でがん細胞があるか調べます。
子宮内膜掻爬:
子宮の組織または子宮の内層の組織のサンプルを採取する手術です。子宮の入り口を拡張し、キューレット(スプーンの形をした器具)を挿入して組織を採取します。採取した組織は顕微鏡でがんの徴候を調べる検査が行われます。この手法はD&Cとも呼ばれます。

諸条件により予後(治癒の可能性)や治療法の選択が異なります。

予後(治癒の可能性)及び治療法の選択は以下の条件により異なります;
  • 病期(がんが子宮内膜の中だけにとどまっているか、子宮全体に拡がっているか、身体の他の部位にまで拡がっているかどうか)。
  • がん細胞が顕微鏡下でどのように見えるか。
  • がん細胞がプロゲステロンによって影響を受けているかどうか。
子宮体がんは、治る確率の高い病気です。

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病期

このセクションの要点
  • 子宮体がんと診断された場合、がん細胞が子宮の内部にとどまっているか、それとも体の他の部分まで拡がっているかを調べる目的で検査を行います。
  • がんが体内に広がる方法は3通りあります。
  • 子宮体がんの病期は以下の通りです:
    • I期
    • II期
    • III期
    • IV期

子宮体がんと診断された場合、がん細胞が子宮の内部にとどまっているか、それとも体の他の部分まで拡がっているかを調べる目的で検査を行います。

がんが子宮の内部にとどまっているか、それとも体の他の部分まで拡がっているかどうかを調べることを「病期診断」といいます。病期診断の過程で集められた情報により病期を確定します。最善の治療計画を立てるには病期を把握することが重要であり、病期診断の過程では諸検査や処置を行います。子宮摘出術(子宮を摘出する手術)は子宮体がんがどの程度拡がっているかを確認するために通常行われます。

がんが体内に拡がる方法は3通りあります。

がんが体内に拡がる方法は以下のように3通りあります:
  • 組織を透過して、がんが周囲の正常組織に侵入します。
  • リンパ系を透過して、がんがリンパ系に侵入し、リンパ管を経て体内の他の部分に移動します。
  • 血液を透過して、がんが静脈と毛細血管に侵入し、血液を経て体内の他の部分に移動します。
がん細胞が原発部位(初めの腫瘍)から離脱してリンパや血液を経て体内の他の部分に移動すると、別の腫瘍(二次性腫瘍)を形成するかもしれません。この過程を転移と読んでいます。二次性腫瘍(転移性腫瘍)は原発部位の腫瘍と同じタイプのがんです。例えば、もし乳がんが骨に転移するのなら、骨のがん細胞は実際に乳がんのがん細胞です。その病気は骨のがんではなく、転移性乳がんです。

子宮体がんの病期は以下の通りです:

I期
I期では、がんは子宮の内部にのみ存在します。がんがどの程度拡がっているかにより、IA期およびIB期に分けられます。
IA期:
がんが子宮内膜のみか子宮筋層(子宮体の筋層)の半分以内に認められます。
IB期:
がんが子宮筋層の内側半分以上に拡がっています。
II期
II期では、がんは子宮頸部の結合組織のなかまで拡がっていますが、子宮体を越えてまでは拡がっていません。。
III期
III期では、がんは子宮と子宮頸部を越えて拡がっていますが、骨盤を越えて拡がっていません。がんの範囲が、骨盤内のどこまで達しているかにより、IIIA期、IIIB期、IIIC期に分けられます。
IIIA期:
がんが子宮外層および/あるいは卵管、卵巣および子宮靭帯まで拡がっています。
IIIB期:
がんが膣あるいは子宮傍組織(子宮周囲の結合組織と脂肪)に拡がっています。
IIIC期:
がんが骨盤内のリンパ節および/あるいは大動脈(心臓から血液を運ぶ体の中で最も大きい血管)の周囲まで拡がっています。
IV期
IV期では、がんは骨盤を越えて拡がっています。がんがどの程度拡がっているかによりIVA期とIVB期に分けられます。
IVA期:
がんが膀胱または、腸壁まで拡がっています。
IVB期:
がんが腹部および/あるいは鼠径部のリンパ節などの骨盤を越えた他の部位に拡がっています。

再発性子宮体がん

再発性子宮体がんとは、いったん治療したあとで再発した(再びがんが出てきた)状態をいいます。がんは骨盤、腹部のリンパ節、あるいは体の他の部分に再発します。

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治療法の概要

このセクションの要点
  • 子宮体がんの患者さんに対して様々なタイプの治療法があります。
  • 標準的治療法は以下の4種類です:
    • 手術療法
    • 放射線療法
    • ホルモン療法
  • 新しい治療法は現在、臨床試験で有効性を検証中です。
    • 化学療法
  • 臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。
  • がんの治療を始める前、または始めるか、治療を始めた後に患者さんは臨床試験に参加することができます。
  • フォローアップ検査が必要になるかもしれません。

子宮体がんの患者さんに対して様々なタイプの治療法があります。

子宮体がんの患者さんに対して様々なタイプの治療法があります。標準的(現在使用されている)治療法もあれば、臨床試験として治療が行われるものもあります。治療法に関する臨床試験を行う目的は、現在行われている治療法を改善したり、新しい治療に関する情報を得たりすることにあります。現時点で「標準的」とされている治療法よりも新しい治療法の方がより良いと証明されれば、今度はその新しい治療法が標準的な治療法になる可能性があります。 臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。いくつかの臨床試験は治療を始めていない患者さんにのみ開かれています。

標準的治療法には以下の4種類があります:

手術療法
手術療法(手術によりがんを摘出する方法)は、子宮体がんでもっとも一般的な治療法です。具体的には以下の手術方法があります:
子宮全摘出術:
子宮頸部を含む子宮を取り除く手術です。腟を通じて子宮および子宮頸部を摘出する場合は腟式子宮全摘術といいます。大きく開腹して(腹部を切って)子宮および子宮頸部を摘出する場合は腹式子宮全摘術といいます。小さく開腹して子宮および子宮頸部を摘出する場合は腹腔鏡子宮全摘術といいます。
両側附属器切除術:
両側の卵巣と卵管を摘出する手術です。
広範子宮全摘出術:
子宮頸部、子宮、腟の一部を取り除く手術です。卵巣、卵管および隣接するリンパ節も取り除くことがあります。
手術の際に目にみえるがんを全部取りきれたとしても、手術後に残っているがん細胞を殺すために、患者さんの中には手術後に放射線療法やホルモン療法をしてみてはどうかと医師からいわれる人もいます。このように、手術後に行う治療のことを「術後補助療法」といいます。
放射線療法
放射線療法は高エネルギーX線やその他の種類の放射線を用いてがん細胞を殺すかまたは成長させないでおくがん治療のことです。放射線療法には2つのタイプがあります。体外照射は体外の機械を用いてがんに放射線を照射する治療法です。体内照射は放射性物質を密封した針、シーズ、ワイヤ、カテーテルをがんの内部またはその近くに直接留置して、がんに放射線を照射する治療法です。放射線療法の方法はがんの種類や病期によって異なります。
ホルモン療法
ホルモン療法はホルモンを取り除き、作用を阻止し、がん細胞の増殖を停止させるがん治療です。ホルモンは体の「腺(せん)」と呼ばれるところから出る物質で、血液の流れに乗って体内を循環しています。あるホルモンは特定のがんが増殖する原因となります。検査により、がん細胞の表面にこうしたホルモンに付着する物質(これを受容体といいます)が存在すると分かった場合、ホルモンの生成を減少するまたは作用できなくするために薬剤、手術、放射線療法が行われます。

新しい治療法は現在、臨床試験で有効性を検証中です。

このまとめのセクションでは、現在臨床試験を行っている治療法について触れますが、最新の臨床試験をすべて網羅できていない可能性があります。実施されている臨床試験についての情報はインターネットでNCI Web siteにアクセスすれば、入手できます。
化学療法
化学療法は、薬剤を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞分裂を停止させることでがん細胞の増殖を停止させるがん治療のことです。口から服用したり、筋肉や静脈内に注入する化学療法では、薬剤は血流を通って全身のがん細胞に影響することができます(全身療法)。脳脊髄液、臓器、腹部などの体腔に薬剤を直接注入する化学療法では、薬剤は主にこれらの領域中にあるがん細胞に影響します(局所化学療法)。化学療法はがんの種類や病期によって異なります。

臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。

何人かの患者さんにおいて臨床試験に参加することは最良の治療選択であるかもしれません。臨床試験はがんの研究過程の一つです。臨床試験は新たな治療法が標準的な治療法より安全で有効であるかを見つけ出すために行います。

がんに対する今日の標準的な治療法の多くは早期の臨床試験を基本にしています。臨床試験に参加する患者さんは標準的な治療を受けるか、初めて新しい治療を受けることになるかもしれません。

また、臨床試験に参加する患者さんは未来のがん治療法の改良を助けます。新しい治療法の臨床試験が有効性を示さなくても、しばしば重要な疑問の答えとなり、研究が前進するのを助けます。

がんの治療を始める前、または始めるか、治療を始めた後に患者さんは臨床試験に参加することができます。

いくつかの臨床試験はまだ治療を受けていない患者さんを含んでいます。他の試験はがんが回復していない患者さんに対する治療を評価します。がんが再発する(再起する)のを止めるか、がん治療の副作用を軽減する新しい方法を評価する臨床試験もあります。

臨床試験は国の多くの地域で行われています。治療法の項での現在の治療法の臨床試験へのリンクを参照してください。NCIの臨床試験リストから取り出してきます。

フォローアップ検査が必要になるかもしれません。

がんを診断するために行われた、あるいはがんの病期をみつけるために行われた検査が繰り返されるかもしれません。いくつかの検査は治療がどれぐらいよく効いているかをみるために行われるでしょう。治療を続ける、変更するか止めるかどうかの判断がこれらの検査結果を基に行われるかもしれません。これらはときどき再病期診断と呼ばれます。

いくつかの検査は治療が終わった後に時々継続して行われるでしょう。これらの検査結果は状態が変化したかどうか、またはがんが再発(再起)したかを示すことができます。これらの検査は時々、フォローアップ検査か定期検査と呼ばれます。

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病期別治療法

現在行われている臨床試験の検索結果へのリンクは各治療の項目に記載されています。いくつかのがんの種類や病期については、試験がリストされていないことがあります。リストされていなくても、実施されていると思われる臨床試験については主治医に相談してください。

I期子宮体がん

I期の治療法には次のようなものがあります:
  • 手術(子宮全摘出術および両側付属器切除術)。骨盤や腹部にあるリンパ節にがん細胞があるかどうか顕微鏡で調べる目的で、そうしたリンパ節を一緒に取り除く可能性があります。
  • 手術(子宮全摘出術および両側付属器切除術、場合により骨盤や腹部のリンパ節の切除)に続いて骨盤への腔内照射あるいは外照射。手術後に残っているがん細胞を殺すために放射線源の入ったプラスチック製シリンダーを腔に留置することがあります。
  • 手術を行えない患者さんには放射線療法のみを行います。
  • 放射線療法と化学療法、またはどちらかを行う臨床試験。
現在、米国でI期子宮体がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

II期子宮体がん

IIA期の治療法としては、手術(広範子宮全的術および両側卵管卵巣摘除術)が一般的です。骨盤や腹部リンパ節も切除してがん細胞があるかを顕微鏡で調べます。手術の後に放射線療法を行うことがあります。

現在、米国でII期子宮体がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

III期子宮体がん

III期の治療法には次のようなものがあります:
  • 手術(広範子宮全摘出術、および骨盤のリンパ節を取り除く手術)。手術後に放射線療法(外照射と腔内照射)。
  • 手術を行えない患者さんには放射線療法のみの治療。
  • 手術も放射線療法も行えない患者さんにはホルモン療法の治療
  • 化学療法の臨床試験。
  • 新しい治療法の臨床試験。
現在、米国でIII期子宮体がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

IV期子宮体がん

IV期の治療法には次のようなものがあります:
  • 放射線療法(外照射と腔内照射)。
  • ホルモン療法。
  • 化学療法の臨床試験。
現在、米国でIV期子宮体がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

再発性子宮体がんの治療の選択肢

再発した子宮体がんの治療法には次のようなものがあります:
  • 患者さんの症状を和らげ、生活の質(クオリティー・オブ・ライフ)を改善する目的で、放射線療法を行います。
  • ホルモン療法。
  • 化学療法の臨床試験。
現在、米国で再発子宮体がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。
(2012年04月更新)

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