肝臓は、胸郭内側の右上腹部を占める体の中でもっとも大きな臓器の1つです。それは右葉とそれより小さな左葉の2つの部分から構成されています。肝臓は、以下のことを含む多くの重要な機能をもっています。
- 肝臓は血液から有害な物質を選別し、便や尿として体外に排出します。
- 食物からの脂肪の消化を助ける胆汁を生成します。
- 身体がエネルギーとして使うグリコーゲン(糖質)を貯蔵します。
本文は原発性肝がん(肝臓内に発生するがん)の治療について参照しています。本文では体内の他の部位から発生し、肝臓まで拡大したがんである転移性肝がんの治療については論じていません。原発性肝がんは成人と小児の両方に生じることがあります。しかし、小児に対する治療は成人に対する治療とは異なります(詳しい情報についてはPDQの小児肝がん*の治療についての項目を参照してください)。
(注)*の項目はがんinfoの項目には含まれていません。
以下の試験や手法が用いられます:
理学的所見および既往歴:
しこりなどの疾患の徴候がないか、身体の一般的健康状態を調べます。また患者さんの生活習慣や過去の病歴、治療歴についても調べます。
血清腫瘍マーカー検査:
身体中の器官、組織、また体内にある腫瘍細胞によって放出されるある物質の量を測定するために、血液のサンプルを調べる手法です。特定の有害物質が血液中の量で増加している場合、がん特定の型と関係しています。血液中のα-フェトプロテイン(AFP)値の上昇は肝がんの徴候である場合があります。他のがんや肝硬変、肝炎などある種の非がん性状況でもまたAFP値が上昇することがあります。
肝機能検査:
肝臓によって血液中に放出されるある物質の量を測定するために、血液サンプルを調べる手法です。物質の量が正常より高い場合は、肝がんの徴候である可能性があります。
CTスキャン(CATスキャン):
いろいろな角度から体内の詳細な像を連続的に撮影します。像はX線撮影装置と連動したコンピュータにより作られます。造影剤を静脈内に注入または飲みこむと、臓器や組織がよりはっきり示されます。この方法はまたコンピュータ断層撮影法、またはコンピュータ体軸断層撮影法(CAT)とも呼ばれています。スパイラルあるいはヘリカルCTスキャンは、らせん状に体を走査するX線撮影装置を使って体内の非常に詳細な像を連続的に撮影します。
MRI(核磁気共鳴画像法):
磁石、電波、コンピュータを用いて、体内領域の一連の詳細な画像を撮影する方法です。この検査は核磁気共鳴画像法(NMRI)とも呼ばれています。肝臓と肝臓の近くの血管の詳細な画像を作るために、造影剤を静脈に注入します。この方法はMRA(磁気共鳴血管造影法)とも呼ばれています。
超音波検査:
高エネルギー音波(超音波)を体内組織または器官に反射させ、そのエコーをつくる方法です。エコーからソノグラフと呼ばれる体内組織の像が撮影されます。
腹腔鏡検査:
疾患の徴候を調べるために腹腔内の器官を観察する外科的手法です。腹壁に小さい切開部(切れ目)をつくり、腹腔鏡(細く、ライトの付いたチューブ)を腹部に挿入します。他の器具を使って同じまたは異なる切開部から挿入して生検のために組織サンプルおよびリンパ節を採取することもあります。
生検:
細胞または組織を採取し、病理医が顕微鏡下で観察し、がんの徴候を調べます。X線または超音波検査中に肝臓に挿入した細針を用いてサンプルを採取する場合があります。これは針生検または細針吸引とも呼ばれます。生検が腹腔鏡検査中に行われることもあります。