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甲状腺がん

概説

このセクションの要点
  • 甲状腺がんとは甲状腺組織中に悪性(がん)細胞が形成される病気です。
  • 年齢、性、放射線曝露歴により甲状腺がんの発生するリスクに影響が出ます。
  • 甲状腺髄様がんは時に親から子に継承される遺伝子の変化により誘発されることがあります。
  • 甲状腺がんを疑う症状としては頸部の腫れやしこりなどがあります。
  • 甲状腺がんを発見し、診断するために甲状腺、頸部、血液を調べるための検査が用いられます。
  • 諸条件により予後(治癒の可能性)や治療法の選択が変わります。

甲状腺がんとは甲状腺組織中に悪性(がん)細胞が形成される病気です。

甲状腺は気管(喉ぼとけ)付近の咽喉の基部にある腺で、右葉と左葉からなる蝶のような形状をしています。2つの甲状腺葉は薄い組織片である峡部でつながっています。健全な甲状腺は25セントよりもわずかに大きく、通常、皮膚を通して感じることはできません。甲状腺はいくつかの食べ物やヨウ素含有塩に含まれるミネラルであるヨウ素を用いて数種類のホルモンをつくります。甲状腺ホルモンには次のような機能があります:
  • 心拍数、体温や食べ物をエネルギーに変換する(代謝)速さをコントロールします。
  • 血液中のカルシウム量をコントロールします。
主に4種類の甲状腺がんがあります:
  • 甲状腺乳頭がん:最も一般的なタイプの甲状腺がん。
  • 甲状腺濾胞がん:Hurthle細胞がんは濾胞性甲状腺がんの1種で同じ方法で治療されます。
  • 甲状腺髄様がん。
  • 甲状腺未分化がん。
小児甲状腺がんに関する情報については、PDQの小児にまれながん*に関する項目を参照してください。
(注)*の項目はがんinfoの項目には含まれていません。

年齢、性、放射線曝露歴により甲状腺がんの発生するリスクに影響が出ます。

病気を発症する危険を高めるものをリスク因子と呼びます。リスク因子があるからといって、がんになるとは限りません。また、リスク因子がないからといって、将来がんにならないわけではありません。リスクを持つ可能性のある人は医師に相談してください。甲状腺がんには次のようなリスク因子があります。
  • 年齢が25~65歳である。
  • 女性である。
  • 幼少期に頭頸部への放射線療法の治療歴があるか、原爆被爆の経験がある。この場合、早ければ曝露から5年後にがんが出現することがあります。
  • 甲状腺腫(甲状腺肥大)の既往がある。
  • 甲状腺疾患または甲状腺がんの家族歴がある。
  • 家族性甲状腺髄様がん(FMTC)、多発性内分泌腺腫瘍症候群2A型、多発性内分泌腺腫瘍症候群2B型などある種の遺伝的状況を有する。
  • アジア系人種である。

甲状腺髄様がんは時に親から子に継承される遺伝子の変化により誘発されることがあります。

細胞内の遺伝子は親から子へ遺伝情報を伝達します。親から子に継承される遺伝子のある種の変化により甲状腺髄様がんが誘発されることがあります。甲状腺髄様がんが出現する前に遺伝子変化を発見できる検査法が開発されています。最初に患者さんに対して遺伝子変化があるかどうかを確かめるために検査が行われます。患者さんに遺伝子変化が認められた場合、他の家族に対しても検査が行われることがあります。幼児を含めて遺伝子変化を認める家族に対して甲状腺摘出術(甲状腺を取り除く手術)を行なうことで甲状腺髄様がんを発症する可能性を少なくすることができます。

甲状腺がんを疑う症状としては頸部の腫れやしこりなどがあります。

甲状腺がんでは初期症状が認められず、時に日常診療中に発見されることがあります。腫瘍が大きくなるとともに症状が出現することがありますが、他の状況によっても同じ症状がみられることがあります。リスクがあると考えられる場合には医師に相談してください。:
  • 頸部のしこり。
  • 呼吸困難。
  • 嚥下困難。
  • 嚥下困難。

甲状腺がんを発見し、診断するために甲状腺、頸部、血液を調べるための検査が用いられます。

以下の検査や手法が用いられます:
身体所見および既往歴:
全身を調べて、頸部、喉頭、リンパ節のしこりや脹れ、また何か異常にみえるものなど疾患徴候を含めた一般的健康状態をチェックします。また患者さんのこれまでの生活習慣や過去の疾患および治療の病歴についても調べます。
喉頭鏡検査:
鏡または喉頭鏡を用いて喉頭(発生器)を医師が観察する手法です。喉頭鏡は観察するためのライトとレンズの付いた細いチューブ型装置です。甲状腺がんが声帯を圧迫することがあります。喉頭鏡検査は声帯が正常に動くかどうかを調べるために行われます。
血中ホルモン検査:
身体中の器官、組織によって血液中に放出されるある種のホルモン量を測定するために血液サンプルを調べる方法です。ある物質の量が異常(正常値よりも高値か低値)である場合、それをつくる器官、組織における疾患の徴候である可能性があります。甲状腺刺激ホルモン(TSH) 値が異常でないかどうか血液を調べることがあります。TSHは脳内の下垂体により作られ、甲状腺ホルモンを刺激し、甲状腺濾胞細胞が成長する速度をコントロールします。カルシトニンというホルモンおよび抗甲状腺抗体が高値かどうか血液を調べることもあります。
血液化学的検査:
身体中の器官、組織によって血液中に放出されるカルシウムなどある種の物質の量を測定するために血液サンプルを調べる方法です。ある物質の量が異常(正常値よりも高値か低値)である場合、それをつくる器官、組織における疾患の徴候である可能性があります。
超音波検査:
高エネルギー音波(超音波)を体内組織または器官に反射させ、そのエコーをつくる方法です。エコーからソノグラフと呼ばれる体内組織の像が撮影されます。その後調べるために像は印刷されます。この方法により甲状腺腫瘍の大きさや固体または液体が充満したfluid-filled型の嚢かどうかが示されます。超音波は細針吸引生検のガイドとしても用いられることがあります。
CTスキャン(CATスキャン):
いろいろな角度から体内の詳細な像を連続的に撮影します。像はX線撮影装置と連動したコンピュータにより作られます。造影剤を静脈内に注入するか飲み込むと、臓器や組織がより明瞭に示されます。この方法はまたコンピュータトモグラフィー、コンピュータ断層撮影法、またはコンピュータ体軸断層撮影法とも呼ばれます。
甲状腺の細針吸引生検:
細い針を用いて甲状腺組織を採取します。皮膚を通して針を甲状腺内に挿入し、甲状腺の異なる部分からいくつかの組織サンプルを採取します。病理医が組織を顕微鏡下で観察し、がん細胞があるかどうかを調べます。甲状腺がんはタイプによって診断が難しいことがあるので、患者さんは甲状腺がんの診断に熟練した病理医によって生検サンプルを調べてもらえるように依頼すべきです。
外科生検:
手術中に甲状腺結節または甲状腺片葉から採取した細胞、組織を病理医が顕微鏡下で観察しがんの徴候を調べます。甲状腺がんはタイプによって診断が難しいことがあるので、患者さんは甲状腺がんの診断に熟練した病理医によって生検サンプルを調べてもらえるように依頼すべきです。

諸条件により予後(治癒の可能性)や治療法の選択が変わります。

予後(治癒の可能性)と治療法の選択は以下の条件によって異なります:
  • 患者さんの年齢。
  • 甲状腺がんのタイプ。
  • がんの病期。
  • 患者さんの全身健康状態。
  • 患者さんが多発性内分泌腺腫瘍症候群2B型であるかどうか。
  • 診断されたばかりのがんか、再発(再燃)したがんかどうか。

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病期

このセクションの要点
  • 甲状腺がんと診断されたあと、がん細胞が体の他の部分まで拡がっているかを調べる目的で諸検査を行います。
  • がんが体内に拡がる方法は3通りあります。
  • 45歳未満の患者さんの甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんに対しては以下のような病期が用いられます。
    • I期
    • II期
  • 45歳以上の患者さんの甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんに対しては以下のような病期が用いられます。
    • I期
    • II期
    • III期
    • IV期
  • 甲状腺濾胞がんに対しては以下のような病期が用いられます。
    • 0期
    • I期
    • II期
    • III期
    • IV期
  • 甲状腺未分化がんはIV期の甲状腺がんと考えられます。

甲状腺がんと診断された後、がん細胞が体の他の部分まで拡がっているかを調べる目的で諸検査を行います。

がんが甲状腺内にとどまっているか、それとも体の他の部分まで拡がっているかを調べるために行われる検査を「病期診断」といいます。病期診断のために行われた検査から得られた情報を基に疾患の病期が確定されます。治療計画を立てるために病期を把握することは重要です。病期診断に用いられる検査や方法には以下のようなものがあります:
CTスキャン(CATスキャン):
いろいろな角度から体内の詳細な像を連続的に撮影します。像はX線撮影装置と連動したコンピュータにより作られます。造影剤を静脈内に注入するか飲み込むと、臓器や組織がより明瞭に示されます。この方法はまたコンピュータトモグラフィー、コンピュータ断層撮影法、またはコンピュータ体軸断層撮影法とも呼ばれます。
超音波検査:
高エネルギー音波(超音波)を体内組織または器官に反射させ、そのエコーをつくる方法です。エコーからソノグラフと呼ばれる体内組織の像が撮影されます。その後調べるために像は印刷されます。
胸部X線検査:
胸部内の臓器と骨のX線像です。X線とは体内を通過して、体内領域の写真をフィルム上に撮影できるエネルギーの1種です。

がんが体内に拡がる方法は3通りあります。

がんが体内に拡がる方法は以下のように3通りあります:
  • 組織を透過して、がんが周囲の正常組織に侵入します。
  • リンパ系を透過して、がんがリンパ系に侵入し、リンパ管を経て体内の他の部分に移動します。
  • 血液を透過して、がんが静脈と毛細血管に侵入し、血液を経て体内の他の部分に移動します。
がん細胞が原発部位(初めの腫瘍)から離脱してリンパや血液を経て体内の他の部分に移動すると、別の腫瘍(二次性腫瘍)を形成するかもしれません。この過程を転移と読んでいます。二次性腫瘍(転移性腫瘍)は原発部位の腫瘍と同じタイプのがんです。例えば、もし乳がんが骨に転移するのなら、骨のがん細胞は実際に乳がんのがん細胞です。その病気は骨のがんではなく、転移性乳がんです。

45歳未満の患者さんの甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんに対しては以下のような病期が用いられます。

I期
I期の甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんでは、腫瘍の大きさに関わらずがんが甲状腺内に限局しているか、または甲状腺に隣接する組織、リンパ節まで拡がっていることがあります。がんは身体の他の部分まで拡がっていることはありません。
II期
II期の甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんでは、腫瘍の大きさはさまざまで、がんは甲状腺から肺や骨など身体の他の部分にまで拡がっています。

45歳以上の患者さんの甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんに対しては以下のような病期が用いられます。

I期
I期の甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんでは、がんは甲状腺内にのみ限局しており、大きさは2cm未満です。
II期
II期の甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんでは、がんは甲状腺内にのみ限局しており、大きさは2cm以上、4cm未満です。
III期
III期の甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんでは、以下のいずれかが認められます。
  • 腫瘍の大きさが4cm以上で甲状腺内にのみ限局しているか、または腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっているが、リンパ節までは拡がっていない;
  • 腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっており、さらに気管または喉頭(発声器)付近のリンパ節まで拡がっている。
IV期
IV期の甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんはIVA期、IVB期、IVC期に分けられます。
  • IVA期では、次のいずれかが認められます。
    • 腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺の外側に拡がっており、皮膚、気管、食道、喉頭(発生器)および/または反回喉頭神経(喉頭に続く2つの分枝からなる神経)下の組織まで拡がっているか;がんはリンパ節まで拡がっている;
    • 腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっている。がんは頸部または肺の間の片側または両側リンパ節まで拡がっている。
  • IVB期ではがんは脊柱前部の組織または頸動脈周囲、肺の間の領域中の血管まで拡がっています;がんはリンパ節まで拡がっているかもしれません。
  • IVC期では腫瘍の大きさはさまざまで、がんは肺、骨など身体の他の部分まで拡がっていて、そしてリンパ節まで拡がっているかもしれません。

甲状腺髄様がんに対しては以下のような病期が用いられます。

甲状腺髄様がんに対しては以下のような病期が用いられます。
0期
0期の甲状腺髄様がんは特殊なスクリーニング検査でのみ発見され、腫瘍は甲状腺内に認められないことがあります。
I期
I期の甲状腺髄様がんは甲状腺内にのみ限局しており、大きさは2cm未満です。
II期
II期の甲状腺髄様がんは、次ぎのいずれかが認められます。
  • 腫瘍の大きさが2cm以で、甲状腺内に限局しています;または
  • 腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっているが、リンパ節までは拡がっていません。
III期
III期の甲状腺髄様がんは、腫瘍の大きさに関わらず、気管および喉頭(発声器)付近のリンパ節まで拡がっており、甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっていることがあります。
IV期
IV期の甲状腺髄様がんはIVA期、IVB期、IVC期に分けられます。
  • IVA期では、次のいずれかが認められます。
    • 腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺の外側に拡がっており、皮膚、気管、食道、喉頭(発生器)および/または反回喉頭神経(喉頭に続く2つの分枝からなる神経)下の組織まで拡がっているか;がんは気管または喉頭付近のリンパ節まで拡がっている; あるいは
    • 腫瘍の大きさに関わらず、がんは甲状腺のすぐ外側の組織まで拡がっているかもしれません。がんは頸部または肺の間の片側または両側リンパ節まで拡がっている。
  • IVB期では、がんは脊柱前部の組織または頸動脈周囲、肺の間の領域中の血管まで拡がっています。がんはリンパ節まで拡がっていることがあります。
  • IVC期では、腫瘍の大きさに関わらず、がんは肺、骨など身体の他の部分まで拡がっており、リンパ節まで拡がっていることがあります。

甲状腺未分化がんはIV期の甲状腺がんと考えられます。

甲状腺未分化がんは迅速に成長し、通常、発見された時点で頸部内まで拡がっています。IV期の甲状腺未分化がんはIVA期、IVB期、IVC期に分けられます。
  • IVA期ではがんは甲状腺内に認められ、さらにリンパ節まで拡がっていることがあります。
  • IVB期ではがんは甲状腺の外側に拡がっており、リンパ節まで拡がっていることがあります。
  • IVC期ではがんは肺、骨など身体の他の部分まで拡がっており、リンパ節まで拡がっていることがあります。

再発性甲状腺がん

再発性甲状腺がんは治療後に再び生じた(再燃)がんのことをいいます。甲状腺がんは甲状腺内または身体の他の部分に再発することがあります。

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治療法の概要

このセクションの要点
  • 甲状腺がん患者さんに対して様々なタイプの治療法があります。
  • 5種類の標準的治療法が用いられます:
    • 手術療法
    • 放射性ヨウ素療法を含む放射線療法
    • 化学療法
    • 甲状腺ホルモン療法。
    • 標的療法
  • 新しいタイプの治療法は現在、臨床試験で検証中です。
  • 臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。
  • がんの治療を始める前、または始めるか、治療を始めた後に患者さんは臨床試験に参加することができます。
  • フォローアップ検査が必要になるかもしれません。

甲状腺がん患者さんに対して様々なタイプの治療法があります。

甲状腺がん患者さんに対して各種治療法が適用されます。標準的治療法(現在用いられている治療法)もあれば、臨床試験において検証されているものもあります。治療法についての臨床試験は現在行われている治療法の改善やがん患者さんに対する新しい治療法に対する情報を得るために行われるものです。現時点で標準的と考えられている治療法よりも新しい治療法が良いと示された場合、今度は新しい治療法が標準的治療法になる可能性があります。臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。いくつかの臨床試験は治療を始めていない患者さんにのみ開かれています。

5種類の標準的治療法が用いられます:

手術療法
手術療法は甲状腺がんに対する最も一般的な治療法です。以下の方法のいずれかが用いられます:
  • 葉切除術:甲状腺がんが認められた葉を摘出します。がんが存在するかどうかを調べるためにその領域中のリンパ節生検を行うことがあります。
  • 甲状腺亜全摘術:一部だけを残して甲状腺のほぼ全体を摘出します。
  • リンパ節郭清術:がんに侵されている頸部リンパ節を摘出します。
放射性ヨウ素療法を含む放射線療法
放射線療法は高エネルギーX線やその他の種類の放射線を用いてがん細胞を殺すかまたは成長させないでおくがん治療のことです。放射線療法には2つの種類があります。外照射は体外の機械を用いてがんに放射線を照射する治療法です。腔内照射は放射性物質を密封した針、シーズ、ワイヤ、カテーテルをがんの内部またはその近くに直接留置して、がんに放射線を照射する治療法です。放射線療法の方法は治療されているがんの種類や病期によって異なります。

摘出できなかったすべての甲状腺がん細胞を殺すために手術後に放射線療法を行うことがあります。甲状腺濾胞がん、甲状腺乳頭がんでは時に放射性ヨウ素(RAI)療法による治療が行われることがあります。口から飲み込まれたRAIは、身体の他の部分にまで拡がっている甲状腺がん細胞を含めて残存する全ての甲状腺組織に集積します。ヨウ素は甲状腺のみに取り込まれるため、RAIは他の組織に害を及ぼすことなく甲状腺組織、甲状腺がん細胞を破壊します。RAIの完全治療用量を投与する前にヨウ素が腫瘍に取り込まれるかどうかを確認するため、少量の試験用量が投与されることがあります。
化学療法
化学療法は、薬剤を用いてがん細胞を殺すかまたは細胞分裂を停止されることでがん細胞の増殖を停止させるがん治療のことです。口から服用したり、筋肉や静脈内に注入する化学療法では、薬剤は血流を通って全身のがん細胞に影響することができます(全身療法)。脳脊髄液、臓器、腹部などの体腔に薬剤を直接注入する化学療法では、薬剤は主にこれらの領域中にあるがん細胞に影響します(局所化学療法)。化学療法の方法は治療されているがんの種類や病期によって異なります。

詳しい情報については甲状腺がんに対する承認薬を参照してください。
甲状腺ホルモン療法
ホルモン療法はホルモンを取り除き、作用を阻止し、がん細胞の増殖を停止させるがん治療です。ホルモンが体の「腺(せん)」と呼ばれるところからつくられる物質で、血液の流れに乗って体内を循環しています。甲状腺がんの治療では、甲状腺がんが増殖または再燃する可能性を増加するホルモンである甲状腺刺激ホルモン(TSH)が体内に放出されることを阻止するために薬物が投与されることがあります。

また、甲状腺がんの治療では甲状腺細胞を殺してしまうため甲状腺は十分な甲状腺ホルモンをつくることができません。患者さんに対して甲状腺ホルモン補充錠剤が投与されます。
標的療法
標的療法は、正常な細胞を傷つけずに特定のがん細胞を識別したり攻撃したりする薬剤や他の物質を用いる治療法の1つです。標的療法の1つであるチロシンキナーセ阻害剤(TKI)療法は、がんの成長に必要なきっかけを阻止します。バンデタニブは甲状腺がんの治療に使われるTKIです。

詳しい情報については甲状腺がんに対する承認薬を参照してください。

新しいタイプの治療法は現在、臨床試験で検証中です。

現在アメリカで実施されている臨床試験についての情報はNCI Web site にアクセスすれば入手できます。

臨床試験に参加したいと考える患者さんがいるかもしれません。

何人かの患者さんにおいて臨床試験に参加することは最良の治療選択であるかもしれません。臨床試験はがんの研究過程の一つです。臨床試験は新たな治療法が標準的な治療法より安全で有効であるかを見つけ出すために行います。

がんに対する今日の標準的な治療法の多くは早期の臨床試験を基本にしています。臨床試験に参加する患者さんは標準的な治療を受けるか、初めて新しい治療を受けることになるかもしれません。

また、臨床試験に参加する患者さんは未来のがん治療法の改良を助けます。新しい治療法の臨床試験が有効性を示さなくても、しばしば重要な疑問の答えとなり、研究が前進するのを助けます。

がんの治療を始める前、または始めるか、治療を始めた後に患者さんは臨床試験に参加することができます。

いくつかの臨床試験はまだ治療を受けていない患者さんを含んでいます。他の試験はがんが回復していない患者さんに対する治療を評価します。がんが再発する(再起する)のを止めるか、がん治療の副作用を軽減する新しい方法を評価する臨床試験もあります。

臨床試験は国の多くの地域で行われています。治療法の項での現在の治療法の臨床試験へのリンクを参照してください。NCIの臨床試験リストから取り出してきます。

フォローアップ検査が必要になるかもしれません。

がんを診断するために行われた、あるいはがんの病期をみつけるために行われた検査が繰り返されるかもしれません。いくつかの検査は治療がどれぐらいよく効いているかをみるために行われるでしょう。治療を続ける、変更するか止めるかどうかの判断がこれらの検査結果を基に行われるかもしれません。これらはときどき再病期診断と呼ばれます。

いくつかの検査は治療が終わった後に時々継続して行われるでしょう。これらの検査結果は状態が変化したかどうか、またはがんが再発(再起)したかを示すことができます。これらの検査は時々、フォローアップ検査か定期検査と呼ばれます。

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病期別治療法

現在行われている臨床試験の検索結果へのリンクは各治療の項目に記載されています。いくつかのがんの種類や病期については、試験がリストされていないことがあります。リストされていなくても、実施されていると思われる臨床試験については主治医に相談してください。

I期、II期甲状腺乳頭がんおよび甲状腺濾胞がん

I期、II期の甲状腺乳頭がんおよび甲状腺濾胞がんの治療法には次のようなものがあります:
  • 放射性ヨウ素療法併用または非併用下での甲状腺全摘または亜全摘術。
  • 葉切除術とがんに侵されたリンパ節を摘出後にホルモン療法を施行。手術後に放射性ヨウ素療法が行われることがあります。
現在、米国でI期甲状腺乳頭がんI期甲状腺濾胞がんII期甲状腺乳頭がんII期甲状腺濾胞がん の患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

III期甲状腺乳頭がんおよび甲状腺濾胞がん

通常、III期の甲状腺乳頭がんおよび甲状腺濾胞がんの治療に対しては甲状腺全摘術が行われます。甲状腺の外側に拡がっているがんの他、がんに侵されているリンパ節も摘出されます。手術後に放射性ヨウ素療法または外照射が行われることがあります。

現在、米国でIII期甲状腺乳頭がんIII期甲状腺濾胞がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

IV期甲状腺乳頭がんおよび甲状腺濾胞がん

リンパ節にのみ拡がっているIV期の甲状腺乳頭がん、甲状腺濾胞がんでは治療によりしばしば治癒可能です。がんが肺や骨など身体の他の部分まで拡がっている場合、治療によりがんを治癒することはできませんが、症状を緩和しQOLを改善することができます。治療法には次のようなものがあります:
  • 放射性ヨウ素療法
  • 外照射放射線療法
  • がんが拡がっている領域からがんを摘出するための手術
  • ホルモン療法
  • 化学療法の臨床試験
  • 標的療法の臨床試験
現在、米国でIV期甲状腺乳頭がんIV期甲状腺濾胞がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

甲状腺髄様がん

次のような治療法が行われることがあります:
  • がんが身体の他の部分まで拡がっていない場合、甲状腺全摘術
  • がんに侵されたリンパ節の摘出
  • がんが甲状腺に再発した患者さんに対して症状を緩和しQOLを改善するための緩和療法としての外照射放射線療法
  • 身体の他の部位に拡がったがんにチロシンキナーセ阻害剤を用いた標的療法
  • がんが身体の他の部分まで拡がっている患者さんに対して症状を緩和しQOLを改善するための緩和療法としての化学療法
現在、米国で甲状腺髄様がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

甲状腺未分化がん

次のような治療法が行われることがあります:
  • 症状を緩和しQOLを改善するための緩和療法としての気管開口術
  • がんが甲状腺から離れた部分まで拡がっていない患者さんに対しては症状を緩和しQOLを改善するための緩和療法としての甲状腺全摘術
  • 外照射放射線療法
  • 化学療法
  • 甲状腺全摘後に化学療法と放射線療法を施行する臨床試験
現在、米国で甲状腺未分化がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。

再発性甲状腺がんの治療法

再発性甲状腺がんには次のような治療法が行われることがあります:
  • 放射性ヨウ素療法併用または非併用下での手術
  • がんが、身体検査では確認できず甲状腺スキャンでしか発見できない場合の放射性ヨウ素療法
  • 症状を緩和し生活の質を改善するための緩和療法としての外照射療法あるいは術中放射線療法
  • 化学療法
  • 標的療法の臨床試験
現在、米国で再発性甲状腺がんの患者さんを受け入れている臨床試験があるかどうかをNCIのがん臨床試験リストから確認してください。 試験の場所、治療の種類、薬剤名など研究の他の特徴から研究を詳細に知ることが出来ます。臨床試験に関する一般的情報はNCI Web siteから入手可能です。
(2012年06月更新)

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